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ネクストを駆るには特異な才能が必要だ。
それは大脳新皮質の一部で特殊な電気信号を感知し、それぞれ運動野や視覚領域、聴覚領域に振り分けて処理できる、というものである。もし普通の人間がネクストを制御するならば、極めて統制がとれた十数人のチームが必要となる。だが、それだけの人数をACサイズのマシンに搭乗させるのは実質不可能だ。
AMSに対応し、なおかつ戦闘適性を持った人材は現在、世界中で四十人余りしか見つかっていない。パックスは彼らのことを“リンクス(Links)”と呼んだ。
次第にエンドルフィンが分泌され、ミヒャエルの痛みが和らぐ。だが統合制御体から送り込まれる混濁した情報の渦からは逃れられない。自分の肉体とマシンの境界があやふやになり、五感とセンサ情報がパッチワークのように脳に広がる様は、正に悪夢だ。しかしその辛苦を乗り越えて初めて、リンクスと呼ばれるのだ。
ミヒャエルが駆るのは欧州随一の軍産複合企業体“ローゼンタール”のネクストである。
彼は故郷の英雄が駆っていた爆撃機の名を借り、そのネクストを“カノンフォーゲル”と名付けていた。
ミヒャエルはプライマルアーマー(PA)を作動させ、迎撃に備える。PAは神々が纏うオーラのように機体全体を覆い、神話の時代から蘇ったイージスの盾さながらにその身を守る。
カノンフォーゲルの統合制御体はレーダーを稼働させ、敵機の位置を確認。
機数は八。
人工島の滑走路から離陸してきた可変型MTだ。ネクストを迎撃するには少なすぎるが、今、世界のどこにも企業連合体(パックス)を相手に真っ向から戦える組織はない。テロ集団にしてはまとまった戦力と言えた。
カノンフォーゲルはオーバードブーストをかけ、上昇中の可変MTに迫る。
可変MT隊は離陸したばかりで編隊を組む高度まで上がっていない。最初に離陸した可変MTが上昇しながらプラズマ砲を放った。
カノンフォーゲルは光り輝く砲弾を、鷲が獲物を狙う時のような鋭い急降下で避ける。そして次の瞬間には高度六〇〇メートルで接敵し、可変MTをブレードで一薙ぎした。ブレードは可変MTに大ダメージを与え、可変MTはコントロールを失って失速し、高度を失っていった。
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